2008年12月14日日曜日

落しもの   空又 覚造

 ある所に一見すると、仲の良さそうな母と子供がいました。
 ある日、子供は母親から「外で遊んできなさい」と言われ一人で外に出ました。
 なぜ母親がそのように言ったかというと、その子供はあまり外で遊ばなかったからです。それに友達もいなかったので、一人で石や玩具で遊んでいました。
 その子供は、県道のそばの小川で最近、母親に買ってもらったモーター付きの船を動かしてその流れに逆らって水の上を走らせようとしていました。
 しかし、流れが早いせいかモーターの力が弱いせいか船はいっこうに前に進みません。
 それどころか、下流にどんどん流されていきます。
 「つまらないや」とその子供は呟きそろそろ家に帰ろうかなと考えていました。
 陽も沈みそうですし、少しばかりお腹が減ってきました。
 水の上から船を取り上げ自転車の方に行こうとしたところ、ふと足元のに何か光るものがあるのに気付きました。
 その子供は何だろうと思い、近づいていきました。身体をかがめて、それを手にとってみました。それは一枚の十円玉でした。
 十円玉一コではジュース一本もアイスクリームの一本も買えませんでしたが子供は何かしら、心のはずむ気持ちを感じました。
 ―誰のものだろう
 ―どうしよう?
 ―自分のものにする?
 ―お母さんに言おうか?
 ―それとも、交番のおまわりさんのところへ行こうか
 子供は考えて考えて、結局母親と交番に届けに行くことに決めました。
 母親は手にしっかりと十円玉をにぎっている子供に笑いかけて、一緒に交番に届けに行きました。

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