アタシはねこ。名前なんてないわ。
生まれたときからひとりぼっち。
気が付いたときには、小さな段ボールの箱の中で泣いてたわ。
だって、お腹がすいてたんだもん。
動く気にもなれなかったし、ただ泣いてただけ。
2、3日泣いてたわ。すごく疲れた。
だって、のどがかれちゃう寸前だったもの。
そしたらね、女の人がやってきてミルクをくれたの。
その人、ずっとアタシのこと見てた。
ミルクを飲み終わっても、ずっと、アタシの前に座ってたの。
よく見てみると泣いてたわ。
はじめはアタシと一緒でお腹がすいているのかと思ったけど、
どうも違うみたい。
「あなたもひとりなのね。私もよ」
なんて言ってた。
「淋しい?」って聞かれたけど、ぜんぜん。
アタシは淋しいなんて思ったことないわ。
だって、泣くだけで精一杯だったもの。
それに、淋しいっていう意味もよく分からなかったわ。
その人は淋しいんだって。
人はたくさんいるのにね。ねこだってたくさんいるのよ。
アタシはすぐに元気になって、そこらへんを歩き回ったわ。
あんなとこにじっとしてるつもりはなかったし、
だから女の人とも会うことはなかったの。
だけどね、ある日、見つけたの。
散歩してたらね、家の壁に看板を取り付けようとしていたの。
そしたらね、大きな悲鳴とともに落ちちゃったの。
運良く下を通りかかった人に、助けてもらったみたいだけど。
大勢の人が集まってきて、そしてみんな笑ってた。
ドジな人だなって思ったわ。
でも安心しちゃった。淋しくなさそうだったから。
見つけたついでに、アタシもこのへんに住んでみようかなって思ったわ。
まあ、天気のいい日にでも、もう一度考えてみるけどね。
(2001.1.27 「碧空荘(ご近所さんを探せ)」より)
2001/6/17 アヴァンセリーディング会(淀川河畔にて 朗読:吉田稀)
2008年12月14日日曜日
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