いつもなら 父と行く筈なのに
何故かこの時は 母と出掛けた
竹箒を持ち
首から虫篭をぶら下げて
暗闇を
母の照らす懐中電灯の光を頼りに
歩いていた
辺りは蛙の鳴き声で賑やかで
時折静かになっては
誰の合図でか 一斉に鳴き始める
川の流れが聞こえる頃
母は立ち止まり
「ほら、あそこ」
と言ってゆびを指す
その向こうには
宙を舞う幾つかの光が見える
その光は
点いては消え 消えては点く
幾つかの光が 同時に放たれることもある
その光を追いかけて ボクは走る
あるときは橋の上を
あるときは川原を
時には冷たい水の流れに足を入れ
竹箒を振り回す
箒に引っかかった光は
ボクの手の中に移され
虫篭の中に入る
幾つもの光で溢れる虫篭は
夢の世界への入り口だった
母はその中へ水草を入れ
一晩だけ部屋へ飾ってくれる
「ずっと篭の中じゃ、かわいそうでしょ」
翌日 学校から帰ってくると
篭の中は空っぽになっている
そしてまた
ボクは竹箒を持って出掛ける
2008年12月14日日曜日
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